
歯が欠けたり割れたりする原因
外傷による損傷
歯の欠けや破折の約7〜8割は外部からの衝撃が原因となります。スポーツ中の事故、転倒、交通事故などで顔面に強い衝撃を受けると、歯に大きな力がかかり欠けたり割れたりします。特に前歯は突出しているため、外傷を受けやすい部位です。また、硬いものを噛んだ時(アメやナッツ類など)や、食事中に予期せぬ硬い物が混入していた場合も、歯が欠ける原因となることがあります。外傷による損傷は一瞬で起こり、痛みを伴うことが多く、場合によっては歯の神経まで露出することもあります。
むし歯による歯質の弱化
健康な歯の表面はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、むし歯によって歯の構造が弱くなると、通常の咀嚼力でも欠けやすくなります。むし歯は初期段階では自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行していることがあります。進行したむし歯では歯の内部が空洞化し、歯の強度が著しく低下します。このような状態では、日常的な噛む力でも歯が割れることがあります。定期的な歯科検診を受けることで、早期にむし歯を発見し治療することが重要です。
歯ぎしりや食いしばりによる過度の力
歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中や日中のストレス時に無意識に歯に強い力をかける習慣です。継続的な歯ぎしりや食いしばりは、歯に微細なヒビ(微小亀裂)を生じさせ、時間の経過とともに亀裂が進行します。特に奥歯では、噛む面から歯の根元に向かって縦に割れる「縦破折」が起こりやすくなります。歯ぎしりによる損傷は急に起こるものではなく、長期間にわたって徐々に進行することが特徴です。歯科医院ではマウスピースの作製など、歯ぎしりなどの強い力から歯を守る対策を提案しています。
加齢による歯の劣化
年齢を重ねるにつれて、歯の表面が徐々に擦り減り、もろくなる傾向があります。また、長年の使用による咀嚼面の摩耗や、歯と歯の詰め物の間に生じる微小な動きが、歯の構造に負担をかけます。特に大きな詰め物や被せ物がある歯は、残存歯質が少ないため割れやすくなります。年齢とともに唾液の分泌量も減少するため、むし歯や歯周病のリスクが高まり、間接的に歯の破折リスクも上昇します。40歳を過ぎたら、より丁寧な口腔ケアと定期検診が必要になってきます。
歯が欠けた/割れた時の症状と特徴
主な症状と経過
歯が欠けたり割れたりした場合、以下のような症状が現れることがあります。
- 歯の一部が欠けた感覚
- 舌や頬の内側が欠けた部分に触れると引っかかる感じ
- 冷たいものや熱いものがしみる(知覚過敏)
- 噛むと痛む
- 甘いものがしみる
- 急な激痛
- 歯ぐきの腫れや出血
- 口臭の悪化
症状の程度はかけた深さや大きさによって異なります。エナメル質だけの軽度の、見た目の問題以外に症状がない場合もあります。一方、象牙質まで達する中程度の場合では知覚過敏が現れ、神経(歯髄)に近づくほど痛みは強くなります。神経が露出するような重度の場合では、激しい痛みを伴うことがあります。
歯が欠けた/割れた際の治療法

軽度にかけた場合
エナメル質だけの軽度の場合は、研磨による修正で対応できることがあります。歯科医師が専用の器具を使って欠けた部分を滑らかに整え、見た目や触感を改善します。また、コンポジットレジン(歯科用プラスチック)を使った修復も可能です。歯の色に合わせた素材を欠けた部分にコンポジットレジンを詰め、光で硬化させる治療法で、比較的短時間で審美性を回復できます。定期的なメンテナンスを受けることで長持ちさせることができます。
中程度にかけた場合
歯の3分の1程度までの欠けや、象牙質に達する破折の場合には、より強固な修復が必要となります。コンポジットレジンによる修復や、セラミックインレー(詰め物)などが選択肢となります。特に噛む力がかかる部位では、金属製の詰め物が推奨されることもあります。治療では、適切な材料を選んで欠けた部分を修復します。治療後は1〜2日程度の軽い違和感があることもありますが、すぐに日常生活に戻れます。定期的な検診で修復物の状態を確認することが大切です。
重度にかけた場合
歯の半分以上が欠けたり、神経に近い深い破折の場合は、クラウン(被せ物)による治療が必要になることがあります。神経が露出している場合や、深い破折により神経の炎症が生じている場合は、根管治療(神経を取り除く治療)を行った後、支柱を立てて被せ物で覆う保存治療が行われます。しかし、縦に割れてしまった歯は保存が難しく、抜歯が必要になることもあります。その場合はブリッジやインプラントなどの欠損補綴治療を検討します。治療期間は状態により異なりますが、複数回の通院が必要で、全体の治療が完了するまでに数週間から数カ月かかることもあります。
歯が欠けた/割れた際の対処法

応急処置
歯が欠けたり割れたりした場合、すぐに歯科医院を受診することが望ましいですが、受診までに以下の応急処置を行うことで症状の悪化を防ぐことができます。
- 痛みがある場合は冷たいもので冷やす
- 市販の応急用歯科材料(デンタルセメントなど)を使用して欠けた部分を一時的に保護する
- 鋭利な破折面がある場合は、歯科用ワックスや軟らかいガムを使って覆い、口腔内の粘膜を保護する
- 強い痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を使用する(使用前に説明書をよく読む)
日常生活での注意点
治療が完了するまでは、以下の点に注意しましょう。
- 欠けた部分に食べ物が詰まらないよう、丁寧な歯磨きを心がける
- 極端に熱いものや冷たいものを避ける
- 欠けた歯での咀嚼を避け、反対側で噛む
- 硬い食べ物や粘着性のある食べ物は避ける
- スポーツをする場合はスポーツマウスガードを使用する
- 歯ぎしりの習慣がある場合は、夜間のマウスピース装着を検討する
歯の欠けや割れを予防するための方法
日常のケア
歯の欠けや割れを予防するためには、以下のような日常のケアが重要です。
- 定期的な歯科検診を受ける(3〜6ヶ月に1回が理想的)
- 丁寧な歯磨きと、デンタルフロスや歯間ブラシによる清掃
- バランスの良い食事と、過度の甘いものの摂取を控える
- 硬いものを噛む習慣を避ける(氷や殻の硬いナッツなど)
- 歯ぎしりがある場合は、マウスピースの使用を検討する
- スポーツ時はマウスガードを装着する
- 噛み合わせの問題がある場合は、早めに相談する
当院の歯が欠けた/割れた際の治療方針

削る量を最小限にする保存第一の治療
当院では、国際歯科連盟が提唱する「最小限の侵襲(ミニマムインターベンション)」という概念に基づき、できるだけ歯を残す治療を行っています。悪くなった部分のみピンポイントで丁寧に除去し、健康な部分が削り失われるのを最小限にとどめる治療を心がけています。詰め物についても、削る量が多くなる金属の使用は極力控え、少量でも接着性が高くコンポジットレジンという白い詰め物を使うことで、最小限の削除と修復が可能となっています。
患者さまに合わせた治療法の提案
当院では、患者さまのご要望をしっかりお聞きしたうえで、保険診療を含めた治療の中から最適な治療法をご提案いたします。歯が欠けたり割れたりした場合でも、できるだけ歯を残せるよう最大限の努力をいたします。白い詰め物や被せ物、セラミック治療など、患者さまのニーズに合わせた選択肢をご用意しております。
マイクロスコープを用いた精密治療
当院では、マイクロスコープを用いた精密な治療を行っています。特に神経まで達するような深い欠けや割れの場合には、精密根管治療を行い、再発しにくい成功率の高い治療をすることで歯の保存率を高めることが可能です。治療の精度を上げることで、長期的に安定した結果を得ることができます。