
顎関節症とは?
顎関節症は、顎の関節(顎関節)とその周囲の筋肉に痛みや機能障害が生じる疾患です。口を開こうとすると顎関節(耳の穴の前にあります)や顎を動かす筋肉が痛む、あるいは十分には大きく口を開けられない、または口の開け閉めで顎関節に音がするという症状が出ます。一生の間に二人に一人は経験する一般的な症状ですが、実際に治療が必要なのは症状を自覚した人の約5%と推定されています。医療機関を訪れる患者さんは女性が多く、20~30歳代がピークとなっています。
顎関節症は主に4つのタイプに分類されます。最も多いのは関節円板というクッションが前方にずれて「カクンカクン」という音が出るタイプと、ずれがさらに大きくなり口が大きく開けられなくなるタイプです。その他、筋肉に問題が生じるタイプや、長年の顎関節症により関節の骨が変形するタイプもあります。
顎関節症スクリーニング項目
- 口を大きく開け閉めしたとき、痛みがありますか はい いいえ
この質問に対する回答が「はい」であり、その痛みが1週間以上続いているなら歯科医院を受診してください。
こんな方におすすめ
- 口を開けると顎に痛みがある
- 口を開ける際にカクカク音がする
- 朝起きると顎が痛い、または重く感じる
- 頭痛や肩こりが慢性的にある
- 歯ぎしりや食いしばりをしていると言われる
- 顎が時々引っかかる感覚がある
- 耳の周りに不快感や痛みがある
- あごの動きに制限を感じる
顎関節症の原因
顎関節症の原因は「多因子病因説」で説明されます。様々な要因がタイミングよく重なり、その人の耐久力を超えると症状が出ます。主な寄与因子には以下のものがあります。
- 解剖要因: 顎関節や顎の筋肉の構造的弱さ
- 咬合要因: 不良なかみ合わせ関係(ただし単独では稀に症状を引き起こす程度)
- 精神的要因: 精神的緊張の持続、不安な気持ちの持続
- 外傷要因: かみちがい、打撲、転倒、交通外傷
- 行動要因: 歯列接触癖(TCH)、頬杖、スマホの長時間操作、硬いものを噛む習慣、歯ぎしり、くいしばり
特に「歯列接触癖」は患者さんの約8割に見られる重要な要因で、必要がない時にも上下の歯を接触させている習慣を指します。この癖を改善することで多くの患者さんの症状が改善することが分かっています。
当院の顎関節治療における特徴
可逆的な治療方針
世界的に認められている原則に従い、患者さんに被害を残さない治療(可逆的な治療)を選択します。具体的には、歯を削る、被せ物をする、歯列矯正をするといった不可逆的な治療は避け、スプリント(マウスピース)、開口訓練、マッサージなどで症状を改善させます。日本顎関節学会のガイドラインでも「咬合調整は行うべきではない」と提言されています。
総合的な診断アプローチ
詳細な問診、顎の動きの観察、筋肉の触診など、多角的な診断を行い、必要に応じてレントゲン検査も実施します。患者さんの状態を正確に把握することで、適切な治療方針を立てることができます。
個別対応の治療計画
患者様一人ひとりの症状や生活習慣に合わせた治療計画を立案します。特に行動学的要因に注目し、それらの改善に焦点を当てた治療を行います。
セルフケア教育
治療と並行して、日常生活での注意点やセルフケア方法を丁寧に指導します。セルフケアなしでは症状の完全消失は難しいため、患者様自身による家庭でのセルフケアを積極的に促進します。
顎関節治療のメリット
- 顎の痛みや不快感の緩和により、日常生活の質が向上
- 口の開閉機能の改善で、食事や会話などの基本的機能が回復
- 頭痛、耳の痛み、肩こりなどの関連症状も軽減
- 歯ぎしりや食いしばりによる歯の摩耗や損傷を予防
- 睡眠の質向上と全体的な健康状態の改善
- 正しいかみ合わせの回復による長期的な口腔健康の維持
当院の顎関節治療の流れ

初診カウンセリング・診断
詳細な問診と検査を行い、症状の程度や原因を特定します。患者様のお悩みをしっかりとお聞きし、治療方針をご説明します。顎関節症は様々な病気と症状が似ていることもあるため、正確な診断を心がけています。
治療計画の立案
症状の程度や原因に基づいて、最適な治療計画を立案します。急性期の痛みがある場合は、まずその緩和を優先します。また、患者様の生活習慣や行動パターンも考慮し、実行可能で効果的な計画を立てます。
初期治療
症状に応じて、スプリント(マウスピース)の作製、理学療法、薬物療法などを行います。特にスプリントは夜間睡眠中に使用することで、無意識のかみこみによる顎関節や筋肉への負担を軽減します。痛みが強い時期には鎮痛薬の処方や物理療法も行います。同時に、セルフケア方法や生活習慣の改善点もアドバイスします。
治療開始から2週間経過しても改善傾向がない場合は、専門医への紹介を検討します。「咬合調整処置」は世界的に効果が認められていないため、当院では推奨していません。
経過観察と調整
定期的に症状の変化を確認し、必要に応じて治療内容を調整します。スプリントを使用している場合は、適合状態を確認し調整を行います。
- 顎関節症のセルフケア
急性期のセルフケア
- 氷水を入れたビニール袋で痛む部分を10分ほど冷やした後、ゆっくりと開閉口運動を行う
- 食品は小さく切り分け、かみしめが必要な固い食品を避ける
- 急な開閉口動作を避ける
- あくびをする際は拳骨を下あごの下に置いて開口を抑える
- <h3>症状が落ち着いた後のセルフケア
- 蒸しタオルを5分ほど当てて温める
- 指先でゆっくりマッサージする(強くつまんだり激しくもむのは逆効果)
- 少し痛みを感じる程度に関節を動かし、筋肉を引き延ばす訓練を行う
- 無意識の歯の接触や悪習慣を認識し、改善する
椿本デンタルクリニックでは、「残せる歯をできるだけ生かす」というモットーの下、保存を第一とする低侵襲の顎関節治療を実践しています。顎の痛みや違和感でお悩みの方は、ぜひご相談ください。